今回は泊るので遠慮なく中に入っていった。よろよろの疲労した体で、小屋の扉をがらりと開けて、
「テント張りたいのですけど」と伝えると、
「どうぞどうぞ」と管理人さんが応えてくれた。
そういえば、途中ですれ違ったおじさんが話していたのを思い出した。小屋の管理人さんが女性だってことを。そのおじさんは他の登山客より遅い時間にあったのだが、小屋で一杯飲んでいたとのこと。テントが一張りあったと教えてくれたのだ。
僕らが乗ったバスでそんな早い時間に登った人がいるのかな~と考えながら、小屋の中では管理人さんと先客である年配者が暖かい小屋でおでんを食べながら話をしていた。
「とりあえず荷物置いてから来ます」と伝え、小屋の先にあるテント場でようやく重いザックを降ろすことが出来た。いくつテントを張ることが出来るだろうか、そんなに広くはないが、3人用テントだと4張または5張は張ることが出来るかな。
一旦ザックを置いて、幕営代一人500円、二人で1,000円を持って小屋に戻る。宿泊記録と行動予定を書いてテント場に戻る。だんだん陽が落ちてきた。あまり強くはないが、少しばかり風も出たので、まずは上着を着た。
先客のテントとテント場
すごいきれいなトイレもある
小屋前の景色
テント場は雪が解けて随分ぬかるんでいた。
比較的マシな場所を幕営地に決めて、物置台にザックを置いてテントを引っ張り出した。
ブルーシートではなくグリーンシートをまず広げて、その上からテントを広げた。
組み立て5分、パパパッと我が家が出来た。
暗くなる前の防寒対策として、一度上着を脱いでセーターを着込んだ。
家が出来れば食事の準備だ。
必要な物を物置台に出して、Sさんは火つけ準備。ぼくは寝袋とマットを広げて寝る準備をした。
持ってきた銀マット加工品、アルミのペラペラ簡易防寒対策用シート、百円ショップで買ったペラペラマットを広げ寝る準備完了。
暗くなる前に新しい電池式のランタンを取り出した。
ジェントスのランタン、EX-757MSだ。
明るさは150ルーメンあり、真っ暗になっても随分明るい。
問題が一つあり、300gと少し重いが明るいからまぁいいやということで買った。Sさんも同じ明るさのランタンを持っているがそちらの方が軽い。
着々と食事の準備をしている。
食べる前にビールを冷やしておかねばならぬのだった。
火つけに牛乳パックの切れ端を取り出して、火を着けた。
これが思ったより効果抜群でとてもよく燃えた。
長年キャンパーとして過ごしてきたSさんも牛乳パックの威力には随分感心したようで、「我が家もこれから牛乳パックをちゃんと使おう」と話していた。
火が着いて炭を置いてしばらくすると、炭が安定してきた。
「山で焼き鳥!」を食べるので、まずはせせり串を焼いた。
「串」は自ら打った。
せせりは鶏の首の肉、世間では「ネック」と表現されることもある。
これがまたウマいのだ。
所属する山の会で昨年の11月、紅葉の季節に焼き鳥を焼いたのだが、大好評で焼いたら売れるという「即日完売」だった。
食べたことがある人は、あの味「柔らく、そして味わい深い旨さ」というのを思い出すことだろう。
まぁどうでもよいが、焼酎と焼き鳥にやたりウルサイ同僚に聞いても、
「うんうん、やはりせせりがウマウマだ。まぁ定番と云えば定番だけどね」
と云っていた。
ぼんじりウマいのだけで、それはそこらのスーパーでは売っていない。
近所のスーパーほぐるっと回ってみたけど、有ったものは
鶏皮、せせり、砂肝、もも、むね、手羽、鶏ガラ、モツだっと思う。
ぼんじりはみたことがないなぁ~またこまめに探してみよう。
話は少し脱線したが、焼き鳥を裏表じっくり焼くこと10分少々。最初に出来上がった焼き鳥は先客のテントの方と小屋管理人さんに持っていくことにした。
「焼き鳥直行便で~す」と伝えたら、笑っていた。
「大阪から来られたのですか」と管理人が聞いてきた。
「前に単身赴任をしていて、その時に山に再び登るようになったのです。
冬に雲取山に来たのがこれで4回目、今回初めてこの小屋に来たのです」
「どうぞ中に入って暖まってください」
「まだ焼くものがたくさんあるので、後できますね」
と云って我が家に戻って焼き鳥を食べるのであった。
雪で冷やしたビールを取出し、まずは
「いや~よく登った、ウン、よく頑張った。重い荷物をよく持ち上げた。お疲れ様~」
とグビッとビールを飲み干す。実にウマイ!
せせり串を食べる、やはりウマイ!
あの柔らかく、かつ、うまみがしっかりある肉が疲れた身体に活力を与える味である。
う~ん、ウマイね~うむうむウマウマだ。
といいつつ、次はお湯割りを飲むために湯を沸かす。
何かと忙しいのだ。
焼き鳥はせせり、鶏皮、砂肝を焼いて食べた。
相棒Sさんが持ってきた牛のホルモン、牛の良い部位も惜しみなく焼いて食べたのだ。
食べては呑んで、呑んでは食べる。
焼いたら食べる、食べたら焼く。
呑んだら湯を沸かし、アツアツのお湯割りをアツアツの状態で飲む。
山に来てキャンプをするのか、キャンプをするために山に来たのか、この辺りはよくわからんが、間違いなく山登りに来たのだ。
Sさんと
「ウマいね~何もかもがウマいね~」
と話しつつ、やはり一人足りないね~、まぁいいかなどと毎度同じことを話していた。
一人足りないというのは、何かと手薄なのである。まるでどこかの職場と一緒だ。
管理人さんがトイレに行くので声を掛けてくれ、
「焼き鳥ごちそうさま、とってもおいしかったです」
と云ってくれた。
「明日もこのまま連泊します」
「どうぞどうぞ、大歓迎です」
と云ってくれた。
飯を食べながらSさんと話をしていたのは、テント撤収して山に登り、またテントを張るのはちょいとしんどいね~
下は泥だらけだし、このまま連泊しましょうかと話をして即決で決めたのだ。
テント先客もそろそろ寝るのだろう
「さっきはどうもね~」
と声を掛けてくれた。
暖かい日であるがさすがに少し寒くなってきた。
本日焼くものがなくなったので、後はテントの中で酒を飲むことにした。
炭はテントから離れたところで燃やし切るのがよいので、そのままにしておいた。
テントの中で酒を飲む準備、ちゃんと徳利も持っていった。
これも重いので次から外そう。
日本酒はウマかった、しかし火力が強すぎて徳利がひっくり返った。
さささっと拭いて、寝ることにした。
後で聞いたらSさんが冷たかったと云っていた。
ちゃんとライトを照らして拭けばよかった。ごめんSさん。
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